■ 上総一宮の青海苔養殖
千葉県の九十九里浜に流れる一宮川の他に、南白亀川、夷隅川の河口付近の汽水域にてアオノリ(スジアオノリ)の養殖を行っています。
平成13年の生産量は2,484,000枚、生産額は8,800万円(2002年農林水産統計から)だそうですが、この年は、暖冬の影響等もあり不作に苦しんでいました。
今回は一宮川に2003年12月に2度ほど仕事の合間を見て見学にいってきました。

一宮川を渡る木造作りの中瀬大橋

作業に使う船も昔ながらの木造船

軽トラックで漁場へ

木造船を竿で操り
■ 懐かしい風景

ここを探すのには苦労しました。
九十九里波乗り有料道路とからチョット陸地に入ったこの川にたどり着いた時・・・びっくりの風景が広がっていました。
ご覧のとおりの異空間でした。
東京湾の海苔養殖は毎年新しい養殖技術・船・加工機械等の開発で昔の面影を無くして来ましたが、ここは昔からの明治初頭から始まったアオノリ養殖の歴史を大事にしながら継承していました。
木造の船と木造の橋がそのノスタルジックな風景を引立たせていました。

良く見ると、海苔網はたぶん・・私達が使って古くなったモノを持ってきたものでしょう。
穏やかな漁場では古い海苔網でも十分使えているのだと思います。
網を張る支柱は鉄(亜鉛引き)パイプを立ててあります。
昔は竹だったのでしょうが、長年使うにはこのパイプの方が有効なのでしょうね。
時代とともに多少の変化はあったようです。

ここでアオノリ養殖を営む人達も普段は家のお年寄りが管理して、家の若い人達はサラリーマンがほとんどだそうです。
土日にはここに来て作業をするそうです。
サラリーマン兼業漁家と言うのかな?


海苔網を張った柵

船の艫で摘む

手摘みのアオノリ

育たなかったアオノリ網
■ 手摘み

ここのアオノリは天然採苗です。
10月の中旬に海苔網を張り、アオノリの胞子が自然着生したものを約10cmの長さに伸びたら摘むそうです。

通常は12月いっぱいまで行われるようですが、今年12月のはじめに行ったら、『まだ1枚も作っていない』と・・・
伸びない網を丘に上げたお年寄りが言っていました。
2回目に訪れたときは、数隻の船が柵に入り海苔を摘んでいましたが、これから採れても家と親戚に分ける程度しか採れないから・・・『売るほど無いよ』と・・・

通年では、ひと家で100〜200万円くらいの水揚げがあるそう。今年は採れないから100枚8,000円と漁協から高相場取引の連絡が入ったようですが、『採れなきゃ、いくら高い値段が付いてもお金にならない』と嘆いていました。


不作ながらもやっと採れたアオノリ

ノリ簀を張った枠

天日で干すヨシズを乗せる台

台の上のヨシズを広げて四角くしたアオノリを干す
■ 天日で干す
『アサクサノリと同じ方法だよ!』と言う海苔漉き方法は似て異なものでした。
枠に、こちらで使い古したノリスを貼り付けた道具を使っていました。
摘んだ青海苔を真水で荒い、ある程度の長さに切断して、水を張った桶の中に画像の枠を入れ、枠の中にアオノリを流し、形を整えて水から上げます。
それをヨシズの上にひっくり返して天日で干します。
私達の作る黒海苔は、粘着力が強く漉いたノリ簀をそのまま乾燥させます。

ツズキさんから頂いたアオノリ

ここではアサリの養殖も行っているようです。
■ 食する

ここで干した板状のアオノリを分けていただくことは出来ませんでした。
『ダメダメ!みんな注文されていて売れねえよ!』と言われました。
近くの目ぼしいお店に行っても販売していませんでした。
この地域では、アオノリは正月のお雑煮には欠かせない逸品なのです。
ほとんどが地元の需要だそうです。

幸いにも、知人のツズキさんが家に持ってきてくれました。
軽く炙って食べたアオノリは非常に香りが高く美味しかった!
これだけ貴重で手間をかけたアオノリなのだから100枚で6,000円から10,000円と言う価格は納得出来ます。

普通はサラリーマンでこのシーズンは漁師と化す兼業漁師が・・・『天日で干すから香りが高く、美味しいアオノリが出来るんだ!』と言っていました。
味と香りを大事にするために昔ながらの天日干しを守り続けているのかな?・・・

上総国一宮川風景画像(クリック↓大きい画像リンク)

ここの地に行くと、懐かしいと感じる風景が有り、ついつい写真を多く撮ってしまいます。


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